「星を継ぐもの」読了。

「しっかりしろ、半ばを過ぎればきっとページを繰る手が止まらなくなる。あとはずっと怒濤の展開だから……」
ジェイムズ・P・ホーガンのSF作品「星を継ぐもの」を読み終えました。
この小説はSF小説と同時にミステリ小説ではないのか、というのが読み終えた瞬間の感想だ。次々に明かされる事実、そして明かされた事実が呼ぶ謎。そして解明。謎。そして議論。月で発見された人「チャーリー」は一体何者なのか?どこから来たのか?あまりに丁寧に描写され、丁寧に伏線を張られているために退屈に感じる前半部分は、しかしそれが絶対的に必要だったと思わせられる。

よく発達したSFは、どこからが嘘なのか分からないーーこの小説もそうだ。事実の中に、一さじの嘘をさらりと流し込み、それを土台としてあり得ない世界を構築していく。本の中でしか存在し得ない世界を構築してゆく。この本の中で構築される世界は、歴史は、文字通り「宇宙規模」で、またどこから騙されているのか分からない。

「もしかしたら、このようなことが事実なのかもしれない」
突拍子もない物語であるはずなのに、読了後にそう思わされてしまうこの小説は、間違いなく名作だろうと僕は納得する。
星を継ぐもの (創元SF文庫)