舞城王太郎「ビッチマグネット」を読みました

新潮の立ち読みで冒頭文読んだりして「こころは齧られたれた文削れる」ってので「あーまためくるめくメタワールドに突入するのかなあ、とか思ったのですが、そんな事は無かったです。
読み終えた感想は、人生はロック。いや、冗談抜きで本当に。
とりあえず、前半部分は凄いライト。ディスコ探偵の後だから余計にそう感じるのかもしれないけれど、凄く軽快な文体でポップな感じ。えーこれ本当に舞城なのうっそマジ信じらんない!って言いたくなる位の読み易さ。
どれくらい読み易いかって言うと、とある友人が舞城作品を読んで「六方最密充填」と揶揄していた改行なしページ文字だらけドーン!ってのが、まるで普通の小説のようにきちきちと改行が入ってる位。驚き。

まあ、そんな所は置いておいて、内容はちょっと歪な「家族」物語。歪なんだけど、ただそれがまた普通に世間一般にコロコロと転がっていそうな程度の"歪さ"であり、それがリアリティを持たせてぐいぐい物語に引っ張られて行く。
前半で家族の状況を丁寧に、ライトに描いていたのから、後半になるにつれて徐々に問題が発生するわそれを解決するのにてんやわんやで読むのをやめられない。純文っぽい作品なのに盛り上がる場所があるし、(舞城的)ミステリー小説みたいな理論展開があるしで、時々クスリと笑いながら飽きる事なく最後まで一気に読める。
こうしてみると、人生は本当にロック。色んなメロディを奏でながら、止まる事無く戻ることなく転がって突き進んでどーん!と何処かにぶちあたって、また違う方向に転がりだす。それを凄い軽快に描ききったのがこの作品。

ディスコ探偵で「俺先に走ってるから!付いて来れるもんなら付いてこい!」って言いながらぶむるるる!とアクセル全開でカッ飛んで行った舞城が、何か知らないけど向かった方向と違う方向から「やあ、皆付いて来れなかったみたいだからさ!」と戻ってきたような感じ。

うん、寝る前に一気に読んで興奮しているから良く分からないレビューになりましたが、皆も読むといいと思うよ!おすすめ!

しかし、やっぱり心理描写が秀逸で、これは確かに女性説が出てもおかしくないよなあとか思ったりもするんだけど、こんなに激しくアップダウンヒャッハー!するような小説を書く女性が本当に居るんだとしたら、是非会ってみたいですわ……。

ビッチマグネット

ビッチマグネット