私の彼はFreeBSD - 最終話「せめて、計算機らしく」

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ロードアベレージ*1上昇、止まりません!」悲壮な叫びが部屋に響く。「10...30....40....50!人大杉です!*2」「お願い、耐えて...」私の小さな祈りの声は廃熱ファンの低い唸りの中に紛れ、誰の耳にも届かずに地に落ちる。
スイッチのランプは途切れる事無く光り続き、ロードバランサー*3は忙しなく負荷を分散し続ける。段々と飛び交う声が減ってゆき、そして最後にはファンの音だけがサーバルームを包む。耐えられない、私には、耐えられない。「後一時間なの。後一時間だけ乗り越えられれば増強用サーバのセットアップが終わるはずなの!」私はそう叫びながらオペレータに詰め寄る。「ねえ、それまで私の彼は全てのタスクを捌ききってくれるんだよね?ねぇ!?ねぇったら!」しかしオペレータは私からふっと視線を外し「このままですと。。。」と言葉を濁す。
そのとき、別のオペレータの声が響く。「駄目です、Server1が負荷に耐えきれず落ちます!」「Server5、同じく落ちます!」次々とサーバが落ちてゆき、サーバルームの中に重い空気が漂いだす。「もう無理だ。。。」「リリースが早すぎたんだ。。。」数日風呂に入ってない臭い頭を抱えてエンジニア達が地面にうずくまり始める。何よ、何よ!そんなにすぐ諦めるんなんて!信じられない!ああ私の大切な彼。大切な、大切な彼。そんな彼がこんな高負荷に晒されて、その上見捨てられようといているなんて信じられない!「私が、彼を救ってみせる!」そう、私の彼はFreeBSD。どんなリクエストだって捌かせてみせるんだから!「代わって!私がやるわ!」

記録を残すプロセスは彼女の手によって止められ、記録はここで途切れている。果たして、彼女はこのプロジェクトを、彼を救うことが出来たのであろうか。その結末を知るのは彼女とその彼氏だけである。

*1:どれだけの仕事がシステムの処理待ちなのかの値

*2:2ちゃんねるでは、ロードアベレージが50を越えると"人大杉"と表示されてアクセス制限される

*3:複数のサーバにアクセスを分散させて負荷を分散させるもの