おっぱいの定義。

「この間、友人とおっぱいの定義について話をしたのだけれど、なかなか難しかった」車での移動中、そう友人から告げられた。
「はあ、おっぱいの定義ねえ。単純に傾きを微分してやればいいんじゃない?」おっぱいの定義なんていう、そんな目に見えるものの定義が難しいなんて、そんな事があるはずがないと僕は思い、そう答えた。「いや、そうでもないんだよ。」友人は顔をしかめてそうこたえた。
「そもそも、おっぱいっていうのは定量的なものなのだろうか。考えてもみろ、先の君の考え方でおっぱいを定義付けしようとすると、おっぱいに膨らみがない、いわゆる貧乳の人のおっぱいはおっぱいでなくなってしまう。」僕は衝撃を受けた。「な、ならば統計学的手法を使って定義づけすればいいんじゃないか?」そう僕は苦し紛れに答えたが、友人は悲しそうな顔をして首を振った。「その定義から漏れた人のおっぱいを、お前はおっぱいとして認めないというつもりなのか?」僕は絶望的な気分になった。「そう、だよな……」「マイノリティーを認めない定義は、僕には認められない。」そう静かに友人は呟き、友人は前に向きなおった。
翌日、同じことを他の友人たちに振ってみた。やはり議論は荒れ、「そんな安易な定義でおっぱいを定義するつもりか!」「だったら、どのような定義もおっぱいに決めることができないじゃないか!」と議論は平行線を辿った。
その時、一人の声がガラリと空気を変えた。「おっぱい、それは各個人が観測するまでそのおっぱいは未定義なんじゃないか?」一同は驚き声の主の方へ向き直った。「各個人が思い浮かべるおっぱいは様々で、無論それらすべてを満たす定義なんてのは作れる訳がない。だったら、その個人がそれぞれのおっぱいを観測し、"ここまでがおっぱいなんだ"と定義してやらないとダメなんじゃないか?」そいつはそう静かに語り、そして最後に寂しそうに呟いた。「僕たちは、これから先いくつのおっぱいを定義づけする事ができるんだろうな。」その言葉を聞いた僕たちは、皆静かに荷物をまとめ、いつもより早めに講義へと向かった。