新入生は、熱い。

アパートに引っ越して四年、初めて風呂にお湯を張った。次の日、新入生を泊めるのに風呂掃除をしたついでだ。四年前、カビだらけでカラーボックスすら腐る大学宿舎から引っ越したアパート。僕が入るときに湯船は新品に取り換えられて、随分と喜んだことを覚えている。
いきなりの一人暮らしで右も左も分からない状態から一年が過ぎて、少し余裕が出てきた頃。そのころはまだ僕の上に先輩がたくさん残っていて、ときどき首都高へ連れて行ってもらったり、犬吠埼に連れて行ってもらったりした。そうではない日は、真夜中に友人たちと連れ立ってカラオケに繰り出したり。それまでの高校時代の生活とは全てが、何もかもが違っていて、僕は新鮮な毎日を過ごしていた。
けれど、そんな毎日は続くわけもなかった。そんな日々を送る中、僕は結構な単位を落としてしまっていたのだ。三年、四年と進学するにつれて実験などが始まるし、一、二年の頃に落とした単位を取り戻すために、空きコマはほとんど無かった。
そんな生活の中で学んだのは、例えば「エスタロンモカなどのカフェイン剤をいかに効率よく摂取してテストに挑むか」や、「広く薄く単位を集める方法==優良可の可を取る努力で済ませて沢山の単位を集める方法」など、とても褒められたものではなく、毎日がただ単位というパズルピースを集めて、卒業という絵を組み上げる作業になっていった。幸いにして、僕は友人に恵まれて、面倒を見てもらえていたのだけれど(体調管理すら友人が行ってくれていたのだ!)、気づくと順番に先輩は卒業してしまっていたし、無茶な遊びも減っていった。気づくと、入学したてのあの楽しさは、失われていた。

今年は僕も無事になんとか進学できて、院へと進む。今までみたいに馬鹿をやっていても何とかなる時間はもうとうに過ぎ去っていて、もう少し、いや、大いに本気を出して何事にも取り組んでいかねばならない。こう書くと、大学入学時とは違い、輝いているものがないように思われるかもしれない。でも、僕はこう考える。今までは輝いていたものを消費する一方だったのだ。これからは僕が、僕自身を含めた色々なものを磨き、輝かせるのだ。それを楽しむのが、青春を半ば過ぎた僕のやるべきことなのだ。

四年越しに入った風呂は熱く、僕が泊めた新入生も熱かった。きっとこれから打って打たれて、そして磨いて磨かれてゆくのだろう。新入生のみんな、入学おめでとう。