枯れ山

リーフって葉っぱでしょ?リーブ21って多分枯れ葉ってのを表してて、枯れ葉しかない山に花を咲かせましょ!ってノリで栄養剤ブチ込んで復活させるんだろうか。でも、リーブ21とか何かが離れて行くっていう意味も孕んでいて、酷く滑稽だよね。なんてことを一人で考えたりしていると、思いだすのは父親の頭。その頭皮は余りにも風通しが良くて、蒸れるという言葉を知らないようだった。
僕は、そのころ本は一週間に一回一冊何か欲しい本を買ってもらう、友達と遊びに行くのならば必要な分だけ貰う、というような感じでお小遣い、という定期収入は無かった。だから、何か自分で欲しいと思うものがあったら、何かお手伝いをして小遣いを稼ぐしかなかった。
例えば、伯父たちが持っているマンションの草刈りだとか掃除だとかいったものを手伝うだとか、畑仕事を手伝うだとか。ただ、そういったものは定期的にある訳じゃなくて不定期で、それをあてにすることは出来なかった。だから、僕は定期的な収入源を求めた。それが、父の頭皮だった。
父は、当時から白髪も多く、ついでに禿げていたのだけれど、何故か禿げの方は然程気にしていなくて、何故か白髪の方ばかり気にしていた。「おーい、白髪切ってくれー」そう、需要があれば供給がある。白髪は切ってもまた生える。マネタイズ、なんていう言葉は小さかったから知らなかったけれど、笑顔で「お小遣いくれるならやるよ」と言った。
ぷちぷちぷちと切ってゆき、ひと山切って数百円になるかならないか。割の悪いバイトではあったけれど、時々買い食いするには困らない収入だった。
けれど、何事にも終わりはある。物は壊れるし、山は禿げる。そして、元々禿げかかっていた山は、すぐに枯れた。禿げが進行して、そして白髪を切るスピードが速すぎたのだ。まさに焼畑農業の失敗例。白髪があったからまだボリュームがあったように思われた父の頭はすっかり寂しくなってしまった。僕は、収入源を失った。
20歳を超えた今、枕から父と同じ匂いを感じ、そして抜け落ちた髪の毛を見て焦る。母は言う。「私の家系は前から禿げるし、お父さんの家系だとつむじから禿げるよね。あんたは前から後ろから大変ね。早めにリーブ21に通うことをお勧めするよ。」そして、僕は今、貯金を始めた。