文学フリマと悪夢とそして。

私は文学フリマ、なーんていうのを全然しらずに東京の"方"である茨城はつくばに引っ越して3年程経過してしまっていて、のほほーんと暮らしていた最中。 ヒゲを生やしたダンディブロガーことid:Delete_All、未来のインテリホストMKさん(id:Geheimagent)のブログで「文フリ参加するからお前ら絶対来いよな!いいか、絶対来いよな!来ないとフミオのアレが治らないから!」なーんて書かれていた訳で、私は「こりゃいかんと!絶対いかんと!」と興奮しながら鼻毛カッターで鼻毛のお手入れをしたのです。
茨城つくば、というと人は道を歩けば納豆の糸を引き、建物を見れば餃子の形をして......なんて思う人も多いかと思いますが、前者は水戸で後者は茨城ですらなくて栃木の宇都宮です。まあ、そんな都会から文フリまで行くのはたったの3時間ちょいな訳です。

友人(イバ弁準二級のid:PetaHz)と一緒にTXに乗り込み、
「東京さ行くの、久しぶりだっぺ」
「だーっぺ、だっぺ」
なんていう会話はせず、淡々と電車で走り抜け、気づいたら会場!

想像していたよりも人が多く、ビックリ。「あ、あれ、本当に会場ここ?」と友人とキョロキョロしてしまう位の人人人*1。 こういうイベントに参加する経験は殆どなく、おっかなびっくり会場にinして看板を発見。「おお、確かにここだ。会場でけー!」まるでお登りさん状態で、会場を見渡すメタボディな二人。


「さてUMA-SHIKAは何処だ。。。」と会場を見渡すと、やったら目立つブースが。「あれがっ!UMA-SHIKAlっ!」高鳴る胸の鼓動を抑えながらブースに近づき、勇気を振り絞って声を!「ああああのあのあの、すいません、見せてもらっていいいですか?」恋するガールの様にどもってしまい頭真っ白。「あ、はい、どうぞー」と声を掛けてもらって我に返り、本をパラパラと捲る。すげーすげー!寸止めされてたアレやコレやが載ってる載ってる!興奮しながら、「どなたがどなたですか?」と尋ね、MKさんとヨグ太さんが応えて下さって感激*2。でも、余りの緊張に私の記憶はあやふや。
その興奮のまま、私はかわいいアザラシのディスクを受け取り(私はアザラシには目がないのだ!)、帰ろうとするけれど、一つ。「そういやヒゲガンダムの人にまだ会ってないよ!」私は「どなたがフミコさんですか?」と勇気を振り絞って尋ねると奥から「私ですが」と出て来る方フミコさん。ヤバい!フミコさんだ!フミオさんだ!と私は嬉しさと緊張でガチガチに固まってしまい。軽くお話をして頂いたのに緊張の余り、「文フリ楽しんでいって下さいね」とお言葉だけしか現在私のちっぽけな脳みそには残っていません。
その後、私は熱さと緊張で火照った体を冷やすため、4階の喫茶店で休憩。そして、文フリブース回りに出陣!以下のサークルの本を買わせて頂きました。

こういうイベントには全然慣れていなくて、どう回ったもんだろうだとか、どう買えばいいんだろうとか凄く悩んでしまいましたが、結果的に非常に楽しくイベントを満喫できました。

しかし、もう一つ。今回の目的は楽しみにしていた「劇場版エウレカセブン」を観るのもあり、後ろ髪を引かれる思いで私は会場を後にしたのです。「今年は、フミオとかと全然話せなかったけれど、次回はもっとお話しよう!」そう決心しながら。

なぜ、どうして。

けれど、私のそんなささやかな希望という名の生きる目標は絶望へと塗り替えられていった。「これは、一体ッ...!」テレビ版エウレカセブンの別ストーリだという劇場版。パラレルワールド、そういった手法はヒットしたテレビ作品を劇場作品へと作り替えるときによく使われる手であり、しかしそれはテレビ版のシナリオの「味の濃い部分」だけを抜き取って再構成するもので、失敗作となることはまずない。
しかし、これはどうしたことだろうか。確かに、作画は非常に素晴らしい。板野サーカスの流れを引く村木サーカスは、それの特徴として「早すぎる」という批判がまま聞かれるが、しかし今回の劇場版はコンテ、メカ作画の監督として深いところから作り込んでおり、非常にテンポのよい、心地よいサーカス作画を作り上げていた。それなのに、脚本が余りにも稚拙なのだ。
テレビ版を批判する人は多い。最高の材料で作ったインスタント料理だとかと言われている。しかし、テレビ版の世界観は秀逸で、盛り上がる話も多々あった。私が思うに、テレビ版は1年という長い尺があるからと色々詰め込み過ぎて消化不良になっただけなのだ。張り過ぎた意味深な伏線。これを整理して、主人公たちにだけスポットを当てれば、劇場版は名作になると私は考えていたのだ。その予想を、裏切ってくれた。

テロップが終わり、照明が上がる。各所からどよめきが聞こえる。「え、え、え?何コレ。意味分かんない。」私はすぐにこの気持ちを吐き出そうと、友人に声を掛けようとした。しかし、友人は沈んだ声で「もういい。早く出よう。早く帰ろう。」と呟き、新宿を後にした。
僕たちはTXの中で語り合った。何故こうなったのか。テレビ版もシナリオは良いとは言えなかったかもしれない。しかし、それでも世界観は素晴らしく、盛り上がった場面はあった。だのに、それら、唯一よかった世界観というのを全てぶち壊してしまっていたのだ。「でも、僕はこれを観て1500円を無駄にしたとは思わないよ。だって、こんなにも、こんなにも語る余地がある映画なんだよ?こんな映画は滅多にない。」そう語った友人の目は、しかし悲しみを湛えていた。
そんな悲しみは僕を夢の中ですら苦しめ、「納期まで後3日...僕は何とかこのシナリオを直す....!」と言う台詞を何度も呟いた。そんなアンハッピーな月曜日に僕は更に悲しみの海へと投げ出される。

諸事情により、今後、僕は「UMA-SHIKA」本誌に寄稿せずに当ブログでの告知のみの参加となる可能性が高いので、僕の文章が掲載されている「UMA-SHIKA」創刊号を隅から炭になるまで楽しんでくれたら嬉しい。(id:Delete_All 日記より)

ちくしょう。。。畜生!僕が何をしたっていったんだ!僕は絶対に今度はフミオとバルーンファイトの話題で盛り上がると決めたんだ、サイン下さいと言おうと思ったんだ!それなのに「私、普通のオッサンに戻りマース!オエエーッ!」って余りにも酷いじゃあないか!僕は怒りの余り、UMA-SHIKAを読破した。「なんだこれ。。。。おもしれえ!」
mkさんの、不思議な田舎ワールド。実在するとしか思えないその世界の描写。ぐいぐぐいと引き込まれ。
id:Dirk_Digglerさんの作品は、子供視点からの不思議な小説。短い話同士は繋がってゆき、不思議な出来事と共に甘酸っぱい少年の日の思い出を紡いでいき。
id:yoghurtさんの作品は、独特の世界観の構築。あり得ない話なのに、「ああ確かにあり得そうだ」と納得してしまうような物語にのめり込み。
id:achidtankさんの作品は、現実的じゃない話なのに、その中の物語はあまりの現実的な人間を描写していて。
id:ayakomiyamotoさんの作品は、可愛い絵柄で描かれた単純な話なのに、キュンと忘れた何かを思い出させてくれて。
ヒゲガンダムさんの作品は、いつものブログとはまた違った、救いのないけれど愛を感じる-そう、愛を感じる-不思議な作品で。
id:nishiogikuchoさんの作品は、人間の歪んだ気持ちを鮮やかな、だけれど陰気な色彩で描き出して。

どれもこれも、本屋で売ってるような本じゃ読めないような素晴らしい作品で。そんな作品の感想を書こうと思ったら、凄くありきたりな、陳腐な言葉でしか表せられなくて。
こんな世界があるんだ、文学フリマなんていう世界があるんだと教えてくれた、ネット上での文学を教えてくれたフミオにもう会えないなんてもう信じらんなくって。

僕は隣の部屋のチャイムを鳴らしました。ピンポーン。「なあ、次回フリマ出ようぜ。」「おk、俺もそう思ってた。」

ps.id:yoneyacco先生の表紙が気に入っているのですが、壁紙化とかはないんですかね?

TB:文フリ公式

*1:写真は帰りに撮ったものなので、人少なめです

*2:別の方でしたらごめんなさい!冗談抜きで緊張してて、マジ記憶あやふやなんです...