「ディファレンス・エンジン」を読みました。

ウィリアム・ギブスンブルース・スターリングの共著「ディファレンス・エンジン」を読みました。
チャールズ・バベッジが考案した計算機、ディファレンス・エンジン-差分機関-がもし完成していたら、というifの世界を描いているもので、史実との違いを味わいながら読むのが、この本の楽しみ方でしょう。恐らく、それと題の「ディファレンス」に掛けているのだと思います*1
蒸気エンジンが生活に溶け込んでおり、今の計算機が溢れた世界と余り変わらない生活を物語は映し出しています。様々な人物の視点で映し出される、蒸気計算機がある世界での物語。その物語は、蒸気計算機で一つに繋がっていきます。蒸気機関という、レガシーな機械で今と変わらないような生活を送っている世界。想像するとわくわくしてしまいますが、そんな世界がこの本の中には広がっていました。
唯一つ、私としては世界史に疎いので、どこまでが史実でどこからがifの話-difference-だったのかが分からずに悲しい思いをしてしまいました。ですが、巻末には作中に出てくる人物や出来事の時点が乗っているので、これを事前に読み、読書中に読み、読了後に読み、そんな涙ぐましい努力をすれば何となくわかった気になれると思います。いや、本当に自分の学の無さが悲しくなってしまいましたが……。
文体を見たときには、かなり読みにくい分類になってしまうんじゃないかなと私は思います。恐らく文章の雰囲気を残そうという方針にて訳しているだろうとは思われるのですが、「直訳なんじゃないのこれ?」と思ってしまう部分が多々あり、何度か部分的に読み直すことがありました。
あと、気をつけたいのが「あとがきや解説は後で!」ってことです。ネタバレされちゃいます。ネタバレされても、推理小説みたいな致命的な打撃ってことはないのですが、最後の章でカラクリが明かされてびっくり!っていう気分を味わう為には、やはり「あとがきは後で」が一番だと思います。はい、私は途中息抜きのつもりで巻末を読んで泣いたクチです。
蒸気機関だとかそういうものが全盛だった時代が好きな方には良いんじゃないでしょうか。後、計算機科学を学んでいる方にもお勧めできます。

ディファレンス・エンジン〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

ディファレンス・エンジン〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

*1:実際には、物語の内容的には差分期間というよりも、同じくバベッジ考案の解析機関-analytical engine-の方が合っていますが、字面的にディファレンスエンジンの方を選んだのでしょう。同様の解説が、巻末にもあります